京都大学医学部附属病院 探索医療センター検証部  Div. Clinical Trial Design & Management, Translational Research Center, Kyoto University Hospital
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探索医療センターを整備すべき必然性
推進すべきトランスレーショナル医療プロジェクトの多さ

わが国におけるトランスレーショナル医療を促進するため、平成13年4月から京都大学医学部附属病院に基礎研究から実際にヒトの疾患に応用して新しい医療を開発する集中的システムとして探索医療センターが設置された。
探索医療開発部には、3年〜5年の任期制を導入し、広く国内外にプロジェクトを公募したところ、平成13年度には、国立大学病院、国立病院等から50件の応募があり、書類審査を経て、わが国のオリジナルで世界をリードでき、かつ実現性のあるプロジェクトを8件に絞り、さらにヒアリングを実施し2件のプロジェクトを決定した。さらに、平成14年度のプロジェクトを公募したところ28件の応募があったところである。


探索医療の実践の場

探索医療開発部で準備された方法と材料等を用いて、実際に十分な説明により同意(インフォームド・コンセント)が得られ、安全面・有効性において十分な期待が得られる患者に臨床応用し、その有効性の検証を行いながら、さらに患者のケアを行う組織が必要である。また、新しい治療が、世界の評価に耐えるためには、各部(「探索医療開発部」、「探索医療検証部」及び探索医療の実践の場である「探索医療部」)が独立した関係でなければならない。そのため、研究者が実験的治療を行うに当たっては、厳格なプロトコルを作成し、倫理委員会の承認を得たうえでそれに基づいて、卓越した臨床医が実行するという安全性かつ透明性の高い客観的システムが不可欠であり、探索医療センターには、「探索医療開発部」、「探索医療検証部」「探索医療部」が設置されている。


探索医療臨床試験実施のバックアップ体制の充実

1. 強力な倫理審査体制が既に整備されていること

京都大学探索医療センターで行うことは、紛れもなく臨床試験であり、製造承認を目的とする企業スポンサー治験のようにGCP規制は受けないが故にむしろ、治験審査とは別の厳格な審査・管理を行わねばならない。GCPは被験者の保護と次項で述べる臨床試験データの統合性を保証するためのルールで、1960年代に米国で法律に基づいて整備されたもので今日、グローバルスタンダードとなっている。
すなわち研究者による臨床試験であっても、研究者自身はもはや自身の研究の倫理の適切な審判者ではないのであるが、わが国では研究者の独りよがりの面がつよく、国際的に認知されるものは殆どなく、今日ようやくそのグローバルスタンダードに準拠する体制を整えつつあるのが現状である。この点で、京都大学は、これまでにも「生体肝移植」等を進め、世界に新しい治療法として確立した実績があり、厳格な倫理審査体制を既に整え、実務を精力的に行っている。また、他大学にない社会健康医学系専攻に、医療倫理学分野を有し、国際レベルの医療倫理専門家を(教授1人、助教授1人)を擁しているばかりでなく、探索医療については査察も行えるような体制を整えている。

2. 探索医療臨床試験プロトコル作成、臨床試験の管理・運営及びデータ解析のための専門家が揃っており、かつシステムができ上がっていること

臨床試験を行うためには統計的にデザインされた周到なプロトコル(研究計画書)が作成されねばならないが、このためには生物統計家と臨床に精通した臨床試験の経験豊富な臨床試験指導医師が必須である。
このために、京都大学探索医療センターでは「探索医療検証部」を設置し、臨床試験指導医師(教授)、生物統計家(助手)とCRC(技官)を配置しているが、多様な探索医療のプロジェクトの実施を考えると探索医療検証部のみで全てをカバーできるものではない。
臨床試験のグローバルスタンダードであるGCPは臨床試験のデータの質の保証を求めており、京都大学には、社会健康医学系専攻にこの分野の専門家を結集した健康解析学講座を有し、医療統計学分野に生物統計家2人(教授1人、助教授1人)薬剤疫学分野に生物統計家1人(助教授)を擁している。このうち、生物統計家1人は今後の遺伝子解析を伴う臨床試験に不可欠の中間解析を専門としている。
さらに、EBM共同研究センター及び寄附講座(疫学研究情報管理学講座)には臨床試験指導医師1人(教授)生物統計家1人(助手)CRC 2人を配して日本では他が追随できない探索医療の検証体制を整えている。
また、平成13年2月には、京都大学医学部に全国唯一の大学医学部としての独立した高度なデータマネジメントセンターとしてEBM共同研究センターを設置し、既にインターネットを利用した世界最先端システムを用いたメガトライアルを進めている。

3. 産学連携の仕組

益々大学における知的所有権の保護が重要な課題となっている。そこで京都大学医学研究科・医学部は、産学連携の新しい仕組みとして、平成14年4月より、産学連携オフィスを設置し、専任の客員教授を配置し、非常勤の弁理士・弁護士と契約して大学で開発された新技術の知的所有数を保護できる仕組みをスタートさせた。
既に、一次調査として、各教官の特許出願・登録状況およびその企業化状況等を把握しており、医学研究科・医学部にあるシーズを順次鋭意発掘して、可能なものから企業化をすすめ、探索医療のセンターとして、積極的にそれらの臨床開発を支援していく予定である。
そのために、社団法人 京都大学医学部芝蘭会に産学情報交流部を設置し、医学研究科・医学部各教官が研究・開発に関する企業側のニーズに積極的に応えるように企業には研究者へのアクセスを仲介する。さらに芝蘭会産学情報交流部長を4月より医学研究科・医学部の客員教授として迎え積極的に活動を開始している。
また、前述のとおりの活動を通じて、研究者と企業との公正な交流を図る探索医療センターは、医学部産学連携オフィスと綿密な連絡をとり研究開発上で発生する知的所有権を保護する。


以上のとおり、わが国で独自に開発が進められ、オリジナリティーの高い臨床開発に進むべきシーズは既に多く存在しており、これらの開発を促進することはわが国の医薬品の開発力を高め、経済性波及効果も大きく、探索医療の実践の場を含めたシステムを早急に整備する必然性がある。また、欧米と激しい競争下にあるトランスレーショナル医療という新しい挑戦的実験医療を進めるために必要な国際水準に見合う倫理審査、プロトコル作成、臨床試験質管理、データ解析および大学としての知的所有権保護ができる支援研究者と高度なインフラを揃えているのは京都大学のみであり、そのような意味でも京都大学探索医療センターの整備の必然性は明らかである。